草案茶室とは

What is Soan Tea Room?

草案茶室と侘茶

 武野紹鴎や千利休らによる侘茶の思想を茶室で表現したもので、室町時代の豪華な唐物の茶道具を使った座敷茶の湯に対し,名物の道具を使わない茶禅一味の侘び茶の精神を突き詰めた、狭小で簡素化した間取りに当時の民家の部材の自然の美を生かした空間です。
 部屋の広さは四畳半以下が多く、草葺ぶきの屋根/土壁/下地窓/躙り口が特徴で、この形は千利休が作り、草庵茶室を完成させたと言われています。
 待庵(国宝)は千利休の作と言われ、侘び茶の境地をよく表しています。【待庵茶室の紹介はこちらから

草案茶室の外観

 杉丸太を主に建物の構造に使い、書院作りの開口部である、縁の掃き出し引き違い障子を排して、土壁を多く使っています。
 開口部は、小さく開けた下地窓や連子窓を使い、茶室の出入口には小さな板戸の躙口を作ります。

 屋根は藁(わら)/茅(かや)などで葺いた粗末な外観が主で、素朴な当時の民家で使われていた材料を巧みに使った仕様です。

下地窓:土壁の一部を塗り残し、壁下地の竹や葭を格子に組んだ小舞(こまい)を見せた窓。
 下地窓は数寄屋大工に頼みます。普通の大工さんでも数寄屋材店で、枠付きの下地窓を使えば作れますが特注サイズになると数寄屋大工より高くなることがあります。
 室内は、片引き障子/掛け障子ですが、これは壁の幅で決めます。
連子窓:土壁に穴を開け木枠を付け、そこに竹を連子(縦方向に一定間隔)に打ったものです。
 如庵の有楽窓は有名ですが、これは竹を詰打ちにした連子窓です。
 室内は引き違い障子を付けるのが一般的です。

不審庵 2つの下地窓
燕庵 躙り口の上は連子窓 左手が下地窓
如庵の外観 正面は通常の連子窓

草案茶室の内観

 茶室内部の丸太の柱で支えられ、面皮柱にして建具が当たる所を納めています。壁は土壁の仕上げでのため腰紙を貼り着物を汚さないように配慮しています。(如庵の暦の反古紙は有名です)
 必要に応じて下地窓、連子窓、突き上げを開けて光を取り入れ、床の間、客座、点前座を照らし、客と亭主の所作に問題のない明るさを確保しています。『草案茶室は暗い』と言われますが、全体を明るくしていないだけで、2方向以上の開口を開け、照明計画で言えば『部分照明』と言える、明暗を作り空間を絶妙に演出しています。

 天井高は頭がつかえるほど低いですが、高低の変化や化粧屋根裏(勾配天井)にするなど変化を持たせて居心地良くしています。材も杉板/網代/葦/蒲など自然素材の工夫を凝らした使い方が見事です。

 茶室の小間を追求し、より緊密な関係と、くつろげる空間を生むため、台目畳や中柱を立てた台目構え、客と客の間に敷く中板なども考えられ、間取りのバリエーションは増えていきます。

 客と亭主が相対する濃密な空間をこれほどまでにこだわったインテリは、世界でも稀な貴重な住文化です。

不審庵 点前座台目構え 天井:左 化粧屋根裏 右 平天井
如庵 歴の腰紙と、有楽窓(連子窓 竹の詰め打ち)
燕庵 台目構え 点前座の色紙窓 風炉先窓
不審庵 床前平天井 躙り口側掛け込み天井