大貫家 茶の湯空間の紹介 母屋から
我が家の茶の湯空間は、母屋の45年前から母が使っている八畳の茶室と水屋、我が家の茶の間とダイニングキッチン(以下DKという)でお点前が出来ます。炉は四ヶ所切れています。
母と妻の茶道教室は、母屋の八畳を主に使い、八畳に炉を2ヶ所、広縁に逆勝手の大炉を切っています。さらに高齢化した母のお弟子さんが座ってお点前が出来るように、点茶番を常設しています。
我が家の茶の間は、お弟子さんが少ない時などで使います。
中庭は蹲を据えて露地の風情にしています。茶事をする時は八畳でやり、茶の間を寄付きにして、中庭に竹ベンチを置いて腰掛け待合にします。
母屋 茶室八畳 淡々斎書と言われる扁額(青苔)
露地は苔を育てている最中です
上が母屋、露地を挟んで、下が我が家
八畳は高齢で正座が出来なくなったお弟子さんに、点茶盤を常設しています
我が家のDK(10畳)茶の間(6畳)の茶の湯空間
間取りの考え方
こちらは我が家で、茶の間とDKの両方で茶の湯を楽しめる空間です。まず日常の使い方の説明をしますので、収納スペース(グレイ色)を見て下さい。
日常で使う部屋は、収納計画をしっかりして『物が出しっぱなしにならない』ことが大切ですので、この部屋でよく使うものは全て仕舞えるように計画しています。
・DKは、冷蔵庫/家電/PCコーナーを少し奥まらせ、テーブルを置くスペースをスッキリさせています。またPCコーナーの横に食品のストック収納を作り、ダイニングに物があふれ出ないようにしています。
・六畳茶の間は映画を観たり/家事をしたり/寝室にもなる、昔ながらの茶の間です。収納は、洋服掛け/TV/茶道具/寝具/衣類/家事道具などが仕舞われ、物を取り出すことで、茶室/家事室/映画部屋/寝室になったりと、茶の間が『場の転換』をします。
また、玄関にも収納を付け、傘/庭の物/廃棄物/ストック品を収納しています。
我が家のパブリックスペースは、狭いことが確認できると思います。(皆さんのお家と比べてみて下さい)
一般的な間取りはリビングですので八畳以上あるのでしょう。リビングはソファを置くので広くないと使い辛いです。でも茶室なら六畳で『広間』ですので、和室は狭くてもゆったりした雰囲気に使えます。
・次に間取り図の黄色い所を見て下さい。これは『飾りスペース(フォーカルポイント)』で、其々の部屋に1ヶ所ずつ作っています。インテリアには必ず必要なフォーカルポイントですが、我が家は『和のテイスト』を入れたものを多く飾ります。
我が家のパブリックスペース
玄関の和風のしつらい
玄関はとても狭いですが『お迎え感』を作ることを大切にしました。
その為に、靴箱の上を飾り場(フォーカルポイント)にして、季節の物を飾れるようにしています。節句(1月1日/3月日/5月5日/7月7日/9月9日)の飾りをすることが多いですが、その他にも自由に飾りつけをして楽しむところです。
窓についている障子は自作(組子は勾玉意匠)したもので和のお迎え感を作っています。
玄関と茶の間の建具は障子を使い、玄関側から室内を見ると、茶の間の『和』と繋がった空間に見え、狭さを感じさせないようにしています。
写真1 玄関から茶の間を見る 写真2 窓枠内に手作り障子(勾玉意匠)
写真1 玄関から茶の間を見る 写真2 窓枠内に手作り障子(勾玉意匠)
茶の間6畳の茶の湯空間
茶の間 『数寄茶の間』と呼んでいます
茶の間六畳をどのような工夫をして、茶室として使っているかを解説いたします。畳の敷き方が一般の六畳と違いますが、それも一つです。
茶の間の玄関側の1畳半を除いたら『四畳半の茶室』に見立てられるようにしているのです。『四畳半』だけ見れば、『正規な四畳半の畳の敷き方』になります。
これは点前座が玄関の障子の前ですと、お茶をしているときに来客が来ると、お点前を中断するなど問題があるからです。
玄関側の1畳半を廊下のように見立てるために『数寄屋衝立』を置いています。これで、『四畳半 上座床』の典型的な茶室の間取りになります。
数寄茶の間の仕様
床の間
四畳半なので3/4間幅は欲しかったのですが、横の収納(モニターと茶道具)幅の関係で、残念ながら半間の床の間です。狭いですが、上座床で、DK側からも見える位置で、フォーカルポイントとしての役割を果たしてくれています。
天井&壁仕上げ
天井の仕上げは『蒲』をボード張りにした数寄屋材です。特徴は天井高さを210㎝と低くしていることです(通常は240㎝)低くすることで侘びた雰囲気と、畳空間の広がりを感じるようにしています。手を上げると天井に触るので、ここでは体操ができない…ですが他に問題はなく心地よいです。
壁は聚楽壁ではなく、珪藻土に色を付けして仕上げました。横がDKなので湿気を気にしたためです。
板戸&障子
障子は茶室らしく腰板を付けています。本格的な仕様ではなく、普通の建具屋に『腰板付きにしてください』と頼んだものです。
押入れの建具は本来の茶室は『鳥の子の太鼓襖(縁無し)』にするのですが、ここでは板戸にして障子の腰板と響き合うようにしています。これは部屋全体を少し侘びた感じにするためです。
南向きの茶室で(それほど日は入りませんが…)、270㎝の掃き出し窓で、茶室としては明る過ぎるので、板戸にして明度を下げることで、侘びた雰囲気を大切にしています。
炉
炉は大炉のサイズに切っています。
これは『数寄茶の間』と名を付けた通り、格式高い本格的な茶室ではなく、自由に使える茶の湯空間としたかったためです。
大炉にすることで『囲炉裏』の雰囲気がでて、正月にはスルメやお餅を焼いたりと、茶の湯以外にも自由に楽しめる空間となります。
照明計画
メイン照明は天井の垂れ壁(見立ての廊下と四畳半の上)に蛍光灯を付け、手作りの和紙セードをつけました。(天井が低いのでペンダント照明が付かない為)
あとはスポットライトと行灯を使っています。スポットライトは、客座/点前座/蒲天井を照らせるようにして、その日の使い方に合わせて照らします。
床の間/スポット照明は調光器をつけています。
写真3 四畳半の茶室、建具の木の面積を大きくすることで、侘びの表現
大炉は、本勝手のお点前でも使い、囲炉裏としても使う
垂れ壁の付けた和紙セードとスポットライト 行灯を使い自由な茶の湯
ダイニングキッチン10畳の茶の湯空間
玄関の和風のしつらい
ダイニングでは2か所でお茶を点てられるようにしていますが、実生活ではここで茶の湯をする時間は少ないので、日常生活を彩る為の茶の湯になっています。
ダイニングテーブルの茶の湯空間
点前座の1つ目はテーブルに付けた『添え点茶番(写真1)』です。
この台が点前座になりますので、お点前をしやすいようにダイニングテーブルよりやや低い高さになっています。
瓶掛が置いてありますが風炉を置くこともできます(写真2は点前座を窓側)
また、添え点茶番を使わなくても、小さめの瓶掛ならばテーブルの上においてもバランスが良いです。
見立の壁床
テーブル向うのニッチを挟んで、左右の壁面其々に『掛釘と無双釘』を打ち、床の間に見立てて飾り付けています。(写真1)
普段はその釘に自由に飾り付けていて、この方がメインの使い方です。
ダイニングに御園棚を置いた茶の湯空間
もう一つ点前が出来る所は、北庭の窓の前に置いてた御園棚です。(写真4)親しい茶の湯の友人が来た時など、初めはよく使いました。今は妻のお弟子さんが稽古します。
普段は飾り卓として活躍していて、御園棚はどんな物でも引き立ててくれる飾り棚としても、とても優秀です(写真5)
以上で紹介は終わります。
我が家は『一般的な大工さん』が作った茶の湯空間で、数寄屋大工さんに頼んだ部分はありません。数寄屋大工さんに頼めばもっと素敵な茶室になったのだと思いますが、こればかりは私の経済力では叶わなかったのです。
でも、予算が無いなりに素敵な空間で気に入ってますし、また自分でさらに細かい工夫をしてより良くして良ければと楽しみも沢山あります。
茶の湯空間は『人に自慢する』ものではなく『自分が豊かに楽しく暮らす』為のものですので、自分が出せる予算内で、一生懸命考えて作ればよいと思います。
皆様も是非、ご自分の茶の湯空間作りに挑戦してみてください。
ダイニング間取り図
テーブルに付けた、添え点茶番
添え点茶番に風炉を置く点前座 瓶掛をテーブルの上に置く点前座
見立ての壁床は、日常は飾り空間として大活躍!
常設している御園棚
御園棚の普段の使い方は、飾り棚として大活躍!!
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