正客の座る所
『床本位と点前座本位』

Where regular customers sit

茶席において、正客の座る位置は、様々な解釈があります。

茶室の相談を受けている時『この間取りでは正客を何処に座らせますか?』という質問がよくありす。
特に点前座と床が離れている時に迷われるようです。

『正客の座る所』の基本の回答は2つあり『床本位(とこほんい)』『点前座本位(てまえざほんい)』です。

『床本位(床付き)』の正客の位置
歴史的に見ると『床本位の正客の位置』が本来のかたちです。床前が貴人畳ですのでそうなります。『床の前が上座』という封建社会で作られた考え方なので江戸時代では特に広間の場合は強い思想です。
歴代の茶室を見ても正客の位置と亭主の位置を、とても気にして間取り考えた様子がうかがえます。(『茶室の間取り史』で歴代茶室の間取りを見る)

ところが近年、大寄せ茶会が始まり、はからいとして『点前座本位』が増えてます。

『点前座本位(釜付き)』の正客の位置
これは床の位置にはこだわらず、亭主の点前座の近くに正客を座らせることです。
大寄せの茶会などは客を沢山入れるので、亭主(又は席主)と正客が話やすい近い距離になるように必ずこうします。茶道流派が主催する茶会でも同様にしますので、これも正しい正客の位置と考えて良いのでしょう。

初座と後座で『居替り』することもある

茶事での『初座と後座で居替り』
また、茶事では『床本位と点前座本位』を『初座と後座で居替り』をすることもあります。これは初座は『床本位』、後座は『点前座本位』事にすることが多いようです。
後座では点前座でお茶を点てますので、会話しやすくするのでしょう

『居替り』の茶室として藪内家の燕庵は有名ですが、『初座』では、『床本位』『点前座本位』でもないのが特徴です。『見せる茶室』への展開と言われ、別の思想で正客の座る所を定めています。(これは近々公開します)

まとめ
正客の位置はその時の状況(どんな客人を、どんな茶室に、何人呼び、どんな茶会や茶事にするのか)で変えてもよいと解釈できます。
『床本位』ならば、正客を大切なお客様としての、おもてなしの形になります。
『点前座本位』は、お客様との会話のやり取りを楽しむ、おもてなしの距離が作りやすいということです。

お茶室を作られる方へ
お茶室を考える時に、お客様の座られる位置を、考えることは素晴らしいことで、質問してくる方は茶道に熱心な方だと感じます。
自宅では、お稽古や茶事、ミニ茶会など人数が限られた本来の茶の湯の形になりますので、貴方自身が『どんな茶の湯をやりたいのか問うことになります。
貴方らしい茶の湯の形が見えてきますので、時間をかけてゆっくり考えることも大切なのでしょう。

なお、茶道の流派や先生により、違う解釈もあるかと思いますので、その時はご一報いただけますと幸いです。勉強になります。