大貫雄二郎 茶の湯履歴
住宅の茶室専門 大貫雄二郎 一級建築士事務所 主宰
私の茶道履歴
母が開く茶道教室のある家で育った私は、やがて茶道の魅力に取りつかました。
お点前は17歳から母の茶道教室で習い始めました。母は女学生時代から茶道を習い、学校の先生をしている時は茶道部の顧問を務めていたそうです。母が本格的に茶道を始めたのは、私が小学生になり手が離れた頃で、母の父から「子どもが学校に通い始めたら、自分の趣味を持ちなさい」と言われ「茶道をやる」と決めたようです。
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大貫雄二郎
自宅の茶道教室が、茶の湯の始まり
■茶道の始めは…お点前の順番がこない
私が茶道に興味をもったのは、美術が好きだったので茶道具の美しさに魅了されたこと、大きな真っ黒な茶碗で抹茶をググッと飲む姿がカッコいいと思ったりしたことです。
母のお弟子さんと一緒に稽古していたので、お弟子さんの稽古が優先され、2~3時間待っても点前をやらせてもらえない日も多かったです。お点前がなかなか上達しない私の興味は、茶道具や茶室にも向かいます。…が、これは後でお話しします。
稽古を付けてもらう時は、「お前は基本が分かってない!」と怒られてばかりで、平点前の『所作を美しく』と厳しく指導されました。
十数年過ぎた頃、茶会に行くことも多くなり(当時は茶会が多かったです)、そして、母の茶会のお手伝いや、茶会でお点前をする機会も増え、茶道会館や護国寺など幾度も出入りしていました。
特に護国寺の草庵茶室の茶会は楽しみで、茶の湯と茶室の見学の両方を満喫できる時間でした。
家元の真剣な目と優しい言葉に感動
母(大貫宗友)は裏千家名誉師範 故松村宗喜(鵬雲斎大宗匠の従兄妹にあたる方)に習っていたこともあり、東京でのお家元の献茶式の添え釜を任されることもありました。
添え釜の亭主は男性にしたいとの依頼もあり、茶道をやらない父を立て、私がお点前をすることになりました。
山王日枝神社において、坐忘斎お家元奉仕による献茶式(2004年)が執り行われました。
社中の添え釜に坐忘斎お家元も来てくださり、道具立てに一つづつ丁寧に質問され、それにまつわる話をして頂きました。また「とてもしっかりとしたお点前で美しいです」と私に声もかけて頂きました。もちろん社交辞令的なものもあるのでしょうが、お家元の茶道に対する真剣な姿に、とても感服いたしました。
靖国神社において、鵬雲斎大宗匠の奉仕による献茶式(2006年)が執り行われました。拝殿での大宗匠の献茶式を拝見でき、また短い時間でしたが大宗匠とお話しをさせて頂きました。私が添え釜のお点前をさせて頂くと伝えると、大宗匠は「お点前は宇宙を抱くような大らかな気持ちでやるのです」と、まさに大宗匠らしいお言葉は頂きました。
私がお点前をする立礼席では、大宗匠の真剣な眼差しにビビりながらも、「しっかりした良いお点前です」と最後のお言葉にホッとしたものです。
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美能里会 茶会
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護国寺茶会 不味軒
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坐忘斎お家元日枝神社献茶式 2004年
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鵬雲斎大宗匠 護国寺献茶式 2006年
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護国寺茶会 化生庵
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自宅での茶事
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坐忘斎お家元 道具の説明を丁寧に聴く
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鵬雲斎大宗匠 真剣な眼差しで
他の社中/茶人仲間との茶の湯
積水茶道部ではお点前が楽しくて…
茶道の接点は自宅の茶道教室だけでなく、転勤で茨城県のつくばに6年ほどいた時と、埼玉に5年ほどいた時は、他の茶人とのコミュニケーションがありました。
つくばの研究所(住宅開発)の転勤の頃は、社内の茶道部で緒方先生という地元の先生に稽古を付けて頂きました。
私の母とは正反対で、所作はそこそこでも、上のお点前をドンドン教えてくれる先生でした。
お点前のバリエーションを覚えるのが楽しくなったのはこの頃で、PCでオリジナルの『お点前図解集』を作り始めました。平点前と他のお点前の違いが分かるようにしたのです。
例えば、貴人建てと平点前の違うポイントは、『半東/貴人への配慮/貴人台の扱いを覚える』と分かると、覚えやすくなります。
頭の中が整理されて、理解できてくるとお点前をするのがとても楽しくなります。
茶人仲間との出会いは『真ML茶の湯コミュニティー』から
東京の本社勤務に戻った時は、埼玉に住んでいて、そこでは当時はやり始めた『真ML茶の湯コミュニティー』に入り、そこのオフ会で多くのお茶人や、他流派のお家元にも知り合うことが出来ました。
みんな流派が違うので、お互いのお点前を拝見すると『こんなに違うのか!』とビックリ…つくばでは一生懸命覚えたお点前の手順は…『大した違いでは無いのかも…』と思ったりもしました。
この茶人達10人ぐらいで『飛翔会』というグループを組み、能楽堂茶会/恭慶館茶会/クリスマス茶会/男茶会/仲間の結婚披露茶会/和菓子作りの会/茶杓削りの会/志満金茶会などなど様々なイベントをして楽しい時間と様々な経験ができました。
また、茶室の相談を受けるようになったのも、この『真ML茶の湯コミュニティー』の繋がりからです。
茶会の時に『茶室の模型』を展示したり『どんな茶室を作りたいですか?』とアンケートを取ったりなどしているうちに、様々な方から相談を受けるようになったのです。
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つくばの緒方社中と初釜 1998年
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積水茶道部菊水会 社内茶会 2005年
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飛翔茶会 恭慶館 2004年
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披露宴茶会 大宮公園 松籟2005年
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この頃、まとめ始めた、お点前図解表
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飛翔茶会 こしがや能楽堂 2003年
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飛翔会 男茶会 2006年
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神楽坂志満金 茶会 煎茶の先生と
茶室&茶道具の自己学修
茶室/茶道具の勉強が楽しくて…止まらない
茶道を始めた頃の、あまりお点前をさせてもらえない私は 茶道具や茶室、茶庭の本を良く読むようになりました。お点前の本よりビジュアルが綺麗で見ていて楽しかったのです。当時はお点前以外の茶の湯の本は少なかったので、手当たり次第、全て買い集めました。
茶道具のビジュアル資料(このホームページに記載のもの)をまとめ始めたのは、社会人になって家にパソコンが普及し始めた頃からです。
初めは茶の湯の歴史(淡交平成5年1月から平成6年12月連載『チャート茶道史 谷端昭夫氏』)をまとめました。
これが茶の湯資料をまとめるきっかけで、歴史の流れが分かると、調べるのが面白くなり、集めた茶の湯関係の本をスキャニングして、茶道具/茶室を年代ごとに分類してレイアウトしていきました。そうすると、どのデザイン(間取り)が本科でそのアレンジしたデザイン(間取り)がどんなバリエーションであるのか、が分かってくるので楽しい作業でした。
そして茶室研究は、やがて『自宅に国宝茶室を作ったらどうなるか?』と、一般的な家を想定して『間取り図を計画/起し絵図作り』を始めました。(ホームページに記載しています)
この作業で役に立ったのが『北尾春道著の数寄屋詳細図譜』です。茶室の大きさ/天井の高さ/床の役釘を打つ位置まで詳細に記載されているので、その寸法で茶室を計画することで私たちが住んでいる住宅とのスケールの差がよくつかめました。
一般住宅と茶室の魅力の違いを簡単にお伝えしますと、畳に座った時の空間のバランスがとても居心地良く考えられていることです。天井が低いことも大切な要素で、畳スペースの広がりの豊かさを強調することが出来ます。
現代のように、椅子に座ったり、立って感じる空間ではないのです。
また茶室は暗いと言っても、2方向以上の窓から光を取り、情緒的な光空間を創っています。これは現代主流になってきている『部分照明』の効果と同じように計画された光環境なのです。
茶室拝見の旅
古典茶室の見学を始めたのは、茶会で草案茶室を見るだけでは物足らなくなり、有名茶室を見たかったからです。
まだ子供が小さかったので観光もかねて、毎年のように全国各地の茶室を訪ねました。
京都の待庵、高台寺茶室、金閣寺茶室、大徳寺にも何回も訪れ密庵席も拝見する機会がありました。表千家では祖堂、残月亭、七畳と無一物、不審庵など素晴らしいものを見せて頂きました。愛知県の有楽苑、箱根の強羅公園茶室、横浜の三渓園茶室、会津の麒閣 (小庵の茶室)など、全国を回りました。
実際に拝見した茶室は、写真で見る印象とは違い、どれも物静かで心が安らぐ空間だったと心に残っています。
最も心に残る茶室は『表千家』『待庵』『箱根強羅』です。それは「どんな使い方をしていたか想像を膨らませてくれる」ことです。多くの茶室は記念碑的にただ『茶室がある』感じで、それ以上のイメージが膨らまないものも多かったです(入れる場所を制限していたこともあるので、しょうがないのですが…)。
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京都高台寺 傘亭 時雨亭1995年
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大徳寺 母の社中の方と 2003年
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平林寺 睡足軒 2005年
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三渓園 聴秋閣 2006年
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大阪万博記念公園 汎庵・万里庵 2009年
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金閣寺 夕佳亭 2000年
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有楽苑 元庵 2004年
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京都 表千家 2005年
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会津 麒閣 2007年
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箱根強羅 白雲洞 2018年
私の現在の茶室設計 我が家の茶道教室&和菓子の会
茶道教室&和菓子の会
私の妻の和菓子の会は、20年ほど前(埼玉在住)から始めています。15年前に実家(東京)で親と同居した時に、私の母が茶道を教えて、妻が和菓子を教えていていました。
和菓子の会に参加する方で、茶道をやりたい人は母の教室に紹介していたのですが、徐々に妻に教えてほしい人が増えて、今は古参のお弟子さんの母の教室/妻の教室の2つがあります。
母は本来の茶道に添った指導ですが、妻のお弟子さんはもっと自由な形です。若いお弟子さんが多く、仕事の関係もあるので、緩めた姿で稽古をしています。若い方は修道の為の茶道ではなく、心の落ち着き/癒しと安らぎ/くつろぎの空間を求めて茶の湯に触れたいのだと思います。その気持ちを大切にした茶の湯教室に人が沢山集まっています。
また海外の方も多く来られて、毎年茶道体験をしていきます。ヨガや禅など東洋や日本の文化に興味を持たれている外国人は沢山いらっしゃるのです。「狭いけれどとても美しい心地の良い部屋ですね」が来られた方みんなが漏らす感想です。
現在はポルトガルの女性が、日本の文化活動ビザを妻の教室に通うことで取得し、修道に励んでいます。私の茶室研究にも興味を持っていまして、専門的な質問も多く、よく知っているなと驚いています。
茶の湯が私の人生を豊かにしてくれました
我が家は母が茶道を始め、私や妻、子ども達、親族も茶道を志し、家族が集まると茶の湯の時間があります。人と人を繋ぐコミュニケーションとして茶の湯は素晴らしい生活文化です。
これは、茶道の長い歴史の中で、お家元が大変な思いをされながら、継続してきたからこそ、今、私たち家族の豊かな生活があるのです。お家元には感服し、感謝しています。
私の使命は、その茶の湯のある豊かな生活を、一人でも多くの人々に届けることです。
日本の和室は希少になっているのが現状で、日本人の多くは洋風化こそが豊かと思っています。しかし、日本の狭い住宅事情では、狭くても豊かな空間を作れる茶室は、わが国では理想的なのです。
茶室を作り、ご自宅では茶の湯文化で豊かに暮らし、西洋の豊かさは町に広がる様々なお店やホテルで求めた方が、無理が少なく人生を楽しめるはずです。
あなたも、茶の湯に興味があり自宅に和室や空いた部屋がある方は、是非とも茶の湯空間を作り、和の文化に親しむ時間を作って頂けたらと思います。
茶の湯は世界に誇れる美しい日本の生活文化です。私はそのお手伝いを出来るかぎり皆さんのサポートをしていく所存です。
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母と妻のリモート稽古風景
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ポルトガル旅行者の茶の湯体験
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モロッコ/イタリア留学生の茶道体験
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正月の親族の集まり 順番にお点前
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我が家の茶の間兼、茶室
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母屋の茶室 お弟子さんに高齢者も多いので、立礼席を近年常設しました
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外国の方に蹲の体験
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ポルトガルの方の、和菓子と茶道体験
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小さい頃から茶道に親しむ私の子ども
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御園棚と、点茶盤のあるダイニング