茶の湯インテリア術2

茶事・茶道教室 本格的な茶室作り

加筆コンテンツ 2021年6月16日Ver.

大勢の方に『茶の湯インテリア術2』をご購入して頂きまして、誠にありがとうございます。多くの方から茶室の相談も受け、茶室作りに興味を持つ方が多いのだと、大変うれしく思っています。ありがとうございます。

 出版後『内容が上手く伝わっていない』と感じたり、『解り辛い/意味が読み取れない』などのご意見を頂いたりと、反省する所があり、この度『加筆』させて頂きました。
 そこで、すでにご購入して頂いた方には『加筆したコンテンツ』が読めるように、本ページで公開させて頂きます。参考にして頂ければ幸いです。

 今後とも茶室を作りのお役に立てるように、尽力をつくしてまりりますので、どうぞよろしくお願いします。 大貫雄二郎

【第1章】茶の湯空間の作り方『間取り編』
 ◇茶事の流れ 最後のページ◇

◇茶の湯空間の動線 まとめ(概略図)

 右上の図は理想の茶事動線を概略図にしたものです。
 お客様が『寄付/露地/茶室』で心地よくす過ごせるために、亭主側が動く回数が多く、範囲が広く『水屋/お勝手/露地』まで動きやすくすることが大切なのが分かります。この動きを把握して茶の湯空間を計画します。

◇露地の無い場合(概略図)

 右下の図はマンションなど露地が無い家で茶事をする場合の動線です。リビングを寄付/中立の待合に使うことが多く、茶室以外に綺麗にするのはここだけなので、亭主側は少ない人数でも出来ます。また、露地があっても大雨の時にはこの形で使う方も多いようです。
 次のマンション茶の湯空間は、この動きの茶事の紹介になります。

※茶事に詳しい方は、すでに知っていることでしょうが、経験の浅い方にお伝えしたいのは『マンションなど露地を使わない茶事』も、よく行われていることです。懐石料理に集中した茶事をしたり、気軽な茶事をするには、露地まで気を回さなくて出来るので、やりやすいのです。

【第1章】茶の湯空間の作り方『間取り編』
 ◇1-3)マンションに作る茶の湯空間◇

◇平四畳茶室 上げ台目切り

茶室:右上の図は茶道教室も茶事も出来る平四畳で考えています。
炉:出炉の『上げ台目切』にしているのは、茶道教室のときに広間切りのお点前が出来るからです。
茶道口:ここでは『茶道口で立ったままご挨拶する』と割り切った考え方です。敷居の手前に茶碗/水差し/水次など置くスペースを作りご挨拶できるようにします。その下に踏み台を仮置きして使います。
 茶事の時、段差を上る茶道口は使い辛いので、道具の運び出しを減らしたお点前(立礼と同じような)にアレンジする方もいます。
 お稽古の時は、茶道口台を常設してご挨拶が出来るようにするのが良いでしょうが、茶事ではお客様の中立の動線上になりますので、一度片づける必要があります。

 また下図のように、キッチン側に洞庫のように建具を付ければそこから道具を出せて運びの回数を減らせます

寄付き:マンションからの風景が広々として、心地の良いこともあるので、リビングやバルコニーの竹ベンチから大空の雲の流れを眺めたりなど、露地とは違うマンションならではの自然の美、それも茶事に活かしてお客様が気持ち良く時を過ごせるように考えます。

※まとまりのない文章で申し訳ありません。お伝えしたいことは…
①平四畳でも『炉を上げて切れば』広間切りが出来ること
②茶道口が段差を上がる形になる場合は『お点前の運びの回数を減らす(立礼風/洞庫を付ける)など工夫を考える
③眺めの良いマンションは、その景色も茶事で活かせる
…と言うことです。これは実際にマンション茶の湯をやられている方の、工夫している内容です。

【第1章】茶の湯空間の作り方『間取り編』
 ◇1-4)リビング横の六畳を茶の湯空間にする◇

◇露地も含めて動線の追加

動線:間取りの良し悪しが分かりやすいよう、露地も含めて動線を記載しています。
亭主側動線:ダイニングから点前座まで
お客側動線:寄付きから床の前まで※茶室内は、畳の角を越す/床前の畳に正面から入る動線にしています(先生によりご指導は違うことがあります)

A-1案):炉を切り、水屋を付けて茶室にしたもの、茶事でのお客様は玄関側、又は、庭側からも動線を使えます。

A-2案):茶室:茶道口、炉を切る位置を変えて『上座床』にこだわった案で、深六畳の茶室になります。点前座が『腹切り畳』にならないように敷き方を変えるため、畳はすべて作り替えです。
床の間は点前座の前だと『亭主床』になり床の拝見がしにくい為、収納と入れ替えてあります。
A-1案に対して、さらに『茶道口/床の間/収納/畳6枚』の変更がありありますので、費用は高くなります。
貴人口:玄関ホール側は問題ありませんが、南側の露地から入る貴人口は、亭主の動線と交差するため違和感があります。しかしこの間取りでも、露地の自然を活かした茶事をやりたい方にはお勧めします。

※ここでは『何を大切に茶の湯をしたいか(この場合は露地に蹲を設置してお清めの場を綺麗に準備していること)で、本来の決まり事とズレても良いです。』と言うことをお伝えしたかったのです。

【第1章】茶の湯空間の作り方『間取り編』
 ◇リビング横の六畳を茶の湯空間 最後に◇

◇追加文

 リビング横の和室を茶の湯空間にする 自宅の茶の湯空間は、あなたの生活や家族の日常生活を優先して考えていきす。それは、自宅で茶事や茶道教室をするにはあなたの日常生活に無理がなく続けられて、家族が茶の湯を理解して出来れば、家族が『茶の湯の最高の応援者』になってくれることが理想だからです。
 リビング横の和室を茶の湯空間にする時にまず決めることは、日常生活で和室をどれだけ使うか考え『繋がりを切った方が良いのか?作った方が良いのか?』で間取りを決めます。

【第1章】茶の湯空間の作り方『間取り編』
 ◇リビングを寄付にする時のしつらい◇

◇リビングを寄付にする時のしつらい

 マンションの茶事でも、リビングを寄付として使っていましたが、その時のしつらいに準備するものを紹介します。代用品をアレンジしても良いでしょう。
乱れ箱:客の持ち物を置く所 <代用>綺麗な布/ラグなど
毛氈:本来は畳の上に敷くもの <代用>ラグ/カーペットなど足の乗る所に
お軸:茶事を暗示させる画幅など <代用>短冊/ポストカードなど軸装して
煙草盆:正客の場所 <代用>綺麗な箱など見立てる
汲出し茶碗:のどの潤いのため <代用>小さな湯飲み
手焙り:暖房器具として 寒い時だけです

※右のパースの間取り図は、上のC案を参照してください。
 これらをリビングに準備すれば、寄付きの雰囲気が作れます。

 注意することは日常的なものを見せないようにすることです。
テレビは建具の中に仕舞えると理想ですが、仕舞えなくても布をかけて見えないようにするなど配慮が必要です。物がごちゃごちゃと見えて、寄付のしつらいに、お客様が気が付かないことが無いようにしましょう。
 軸/乱れ箱等は広く空いた所にキリっと目立つように配置します。

【第2章】茶の湯空間の作り方『仕様編』
 ◇茶室の建具『襖/障子/躙口』◇

◇躙口

 本格的な躙り口は『挟み敷居/挟み鴨居』の仕様ですが、現代の住宅基準の、防水性/耐風圧性/気密性/断熱性はないので、サッシの内側の室内に作る必要があります。その為10数cm部屋内が狭くなります。そして、この仕様で造るためには数寄屋大工さんに頼みます。
 また、普通の大工さんで施工できる『敷居と鴨居』で作っても、使い方としては問題ありません。気にするのは見た目の雰囲気が違うことです。
 【⑥図】は間口180㎝の掃出しサッシの内障子を、上下に分けて『下を躙口/上部を引違い障子』にした例で、普通の大工さんで、よく造られる形です。サッシのクレセントの出幅や/付いている高さによって、サッシと躙り口の隙間をどれくらい離す必要があるのか違うので(クレセントを回したときに建具と干渉しない距離)、多少室内に建具が出てくることがあります。
 【⑦図】は庭に面した180掃出しサッシを躙り口に変更して茶室として使う例です。窓側が躙り口のため少し部屋が狭くなることがあるので(上記の理由)、畳が狭くならないように奥行きに余裕があると調整しやすいです。特に『挟み敷居/挟み鴨居』の仕様にした時は注意しましょう。

【第2章】茶の湯空間の作り方『仕様編』
 ◇2-7)水屋と水屋収納の作り方◇

◇水屋収納

 水屋にはその季節(炉&風炉)で使う物は全て仕舞えるのが理想です。
 下図の間取りは3畳の水屋の収納配置例で、流し側にはやや深い(奥行き56㎝)収納と、反対側に奥行きの浅い(奥行き29㎝)収納を付けていて、その奥行きに合わせた茶道具を収納します。

 収納内は種類ごとに分類して、重くて大きい物が下棚、軽くて小さい物を上棚、中段の取り出しやすい所によく使う物を仕舞うと使いやすいでしょう。(展開図は参考例ですので、アレンジしてください)

 すべての茶道具がここに納まれば良いですが、茶道具はお点前/季節/年毎に違う道具を使うため、長年茶道教室を続けると莫大な道具の数になりますので、ここだけでは納まらないでしょう。
 その場合は全て一か所に収納しきれないので、下記のように分類して、廊下収納/納戸/茶室内など分散して収納場所を探すのが良いでしょう。
・他の季節の茶道具(夏、冬茶碗/季節の柄物など)、これは水屋の収納と半年毎に入れ替えます
棚/屏風など大きくて水屋の収納に置けない物、必要な時に取り出します
茶事(懐石道具)/茶会(数茶碗)などたまに使う道具
高価な道具で特別な時だけ使う道具
干支関係の道具 1年に1回見て12年ごとに使う

 マンションでは収納が広く取れないので、茶室の床を高くした場合は、畳下にも収納を作る方が多いです。出し入れが少し大変なので必要な場合に作るのが良いでしょう。

【第2章】茶の湯空間の作り方『使用編』
◇【コラム】茶室作りの工事までの流れ◇

◇仕様決めの大切なこと

 『仕様編』の最後に、一つ大切なことをお話しします。
 それは『真行草/本格茶室の材料』の考え方が、施工店や銘木屋により違うので、そこに付け込んでくることがあることです。
 具体的にお伝えすると、施工店や銘木屋の『利益が高い材/在庫が余っている材/過去高く仕入れた材』などを工事に使いたいため「本格草庵茶室ならこれを使かわなきゃだめですよ」と茶室をよく理解している雰囲気で売り込んでくることです。それに振り回せれないようにしましょう。その為にはあなたが作りたい茶室のイメージを優先して「ここは安い材でもよい」とキッパリと伝えることです。

 茶人の中にも「本格茶室とは…」と他の人の茶室を悪く言う人も多いです。『自分は良く知っている』と言いたいのでしょうが、あなたが理解の出来ない話なら、それは気にしなくてよいのです。

 私が茶室の勉強をしていた若い頃、様々な数寄屋大工/銘木屋/茶室に詳しい人に話を聞いていました。理解の出来ない話は『なぜそうなのか?いつからそうなのか?』と聞きまくっていて…最後に「そういうもんだよ!」と怒鳴られたことがあります。つまり『茶室作りの考えからきている理由ではない』別の理由あるのだと分かったのです。それは、茶室を作る人/部材を売る人/茶人の自分勝手な都合なのです。

 皆さんは、あなたの都合で茶室を作り、ご自分の茶の湯を目指すのが良いのです。

【第3章】国宝茶室写しを自宅に作る
 ◇密庵席を自宅に作った間取り◇

◇内装を違うイメージにした密庵席

 下記の展開図は、密庵席の間取りをそのままに、仕上げ材を替えたもので、MOA美術館の光琳屋敷の仕上げを取り入れています。現代の流通でも入手出来る材に入れ替えてデザインしたものです。

 張付壁:光琳屋敷と同じように、浅黄色の原紙にキラを摺った『光琳大波』の唐紙を使っています。
 土壁:これも、光琳屋敷と同じ雰囲気の赤土をイメージした仕上げで、密庵席と違う所は、点前座周りの壁も赤土で仕上げたことです。(密庵席は張付壁)唐紙だと点前座の侘びた雰囲気が作れないからです。
 障子:あまり無理なく作れる意匠にして、材は全て白木にしています。腰板の唐紙は似た意匠が現代もありますのでそれを使っています。(※光琳屋敷は張付壁と同じ『光琳大波』を使っていますが、ここでは面積が大きすぎ茶室全体がうるさくなるため本科の落ち着いた唐紙を使っています)
 違棚:これも無理なく作れるシンプルな意匠にして、唐紙は障子の腰板と同じ物を使っています。
 柱/長押:密庵席のように濃い色を着色することも出来ますが、長く使われたように渋い感じにはなりません。(※古びた感じを出すのはエイジング塗装という別の技術もありますが、高価で仕上がり感は職人によりかなり違います)。そこで、木材をそのまま使って、経変変化で色が焼けてくるのを待つことをお勧めします。
 釘隠し:古道具屋やネットオークションでもたまに出ていますので、それ見つけて職人に取り付けてもらうように考えています。

 内装を変えた密庵席のデザインの良し悪しは置いておきますが、現状の密庵席に比べて違う雰囲気のデザインだと感じるでしょう。それは使う部材の『真行草のテイスト』が違うからです。
 デザインは過去の様々なテイストを再構成しながら新しいものを作りますので、規範にするデザイン(この場合は光琳屋敷)を新たに加えれば、使う部材が変わり、新しいデザインが作れます。現在流通している部材でも、自由なテイストの茶室を作ることが出来るのです。
 オリジナルの茶室を考える人は、このように何か別の規範のデザインを組み合わせて新しいデザイン茶室を作っていきます。
(光琳屋敷写真は、新建築社 住宅特集8607より)

【第4章】本来の茶室作りの約束事
 ◇4-1)茶室の間取り◇

◇茶道口/床の間/躙口の理想の位置関係

 茶室の茶道口/床の間/躙口の位置関係は、部屋の中で離して配置できると空間のバランスが良くなります。

床の間と客の入り口(躙口/貴人口)の関係

 躙口/貴人口から見て、床の間が正面の壁面側にあるのが理想です。これはお客様が席入りの時、戸を開け室内に目をやると、正面に床飾りがあるので『ようこそいらっしゃいました』と迎える形が明解になるからです。千家の小間の茶室はほとんど、躙口の正面に床の間が設置されています。
 しかし、実際の間取り作りでは正面に作れなくてもよいので、入り口から見える所に床の間があり、少し距離があれば良いです。(赤矢印)
  躙口/貴人口と床の間を少し離したい訳は、床の間飾りの『掛け軸や花』が綺麗に見えるように、周りの造作をシンプルにして、フォーカルポイントの床の間の印象が煩雑にならないようにするためです。
 利休が床の中の窓(墨蹟窓)を好まなかったという逸話がありますが、掛け軸をスッキリと見せるためには窓は少しうるさい表情なのは確かで、利休の気持ちはわかる気がします。
 しかし茶室の窓の配置で床の間の明りが充分取れないと『暗くて掛け軸が見えない』ことになりますので、墨蹟窓が必要な時もあります。必要か否かは、これも施主が判断するものです。(現代では床の間に照明を付けるのが一般的なので、なくても軸はよめます)

 茶室作りで、茶道口/床の間/躙口の位置関係を決めていく時は、まず茶道口は決めやすく(水屋側キッチン側になる)次にお客様の入口と床の間を決めていくのが順番かと思います。
 茶室の要望(○○畳茶室にしたい/○○床にしたい/庭からの躙口を付けたい/リビングからも入りやすくしたい等々)を決め、其々を取り入れた間取りを何案も検討して、あなたにとっての理想形を探していきましょう。

【用語ポイント解説】
墨蹟窓:床の脇壁に下地窓を開け掛障子を付けた明り窓で、古田織部が好んだと言われます。墨蹟窓の下地に折釘を打ち花入を掛けるものを「花明窓(はなあかりまど)」とも言います。